2013年12月4日

『レッドブルはなぜ世界で52億本も売れるのか』発売記念トークショー 楠木建 先生×諫見祐子さん@三省堂書店有楽町店(2013年12月4日)

エナジードリンクというカテゴリーに忽然と現れた、レッドブル。
そのマーケティングに関する書籍『『レッドブルはなぜ世界で52億本も売れるのか』の
発売を記念して、三省堂書店の有楽町店でトークショーが開催されました。

『レッドブルはなぜ世界で52億本も売れるのか』

そもそもこの本を買おうかどうか悩んでいたところに、このトークショーの
ポスターにつられて購入したので、きっちり聞かなくては。


楠木建先生は、一橋大学大学院の教授。
『ストーリーとしての競争戦略』ほかの経営戦略に関する著書を執筆されています。
今回の書籍のなかでは、解説を担当されました。 
諫見祐子さんは、レッドブルの元マーケティングマネージャ−。
レッドブルの内情を知る貴重な人物として、お話いただける範囲でレッドブルについて解説いただく立場です。


慎重に言葉を選んで話す諫見さんと、まじめな表情の楠木先生。

トークショーのなかで、特に印象的だった箇所をご紹介します。

レッドブルから学ぶべきこと、学ぶべきでないこと

(楠木先生)
  • レッドブルについては、この本に書かれていることしか知らない。まだレッドブルを飲んだことはない。スポーツも興味なし。解説にもっともふさわしくない人物。
  • でも、読んでみたらとてもいい本。いっけん刺激的なことをやっているように見えて、その背後にあるロジックは経営の王道。
  • 商品コンセプト、戦略、ストーリー全体をとらえるべき。だから、戦略の異なる会社が真似をしても、うまくいかない。論理が勉強になる。
  • やること、やらないことが明確。一般的に、スポーツマーケティングは注目されているアスリートやイベント機会に偏りがち。
  • 一方、レッドブルは育成投資。チームを作ることもある。時間のある施策を実行。論理的な裏付けをもとにがまんする。古典的な進めかた。
  • 個人的にはスポーツに関わりたくない。歩くのも嫌だ。スポーツも見ない。家にテレビもない。汗をかくのはサウナのなかだけ。そもそもローテンション、夜は9時に寝る。

レッドブルとはどんな会社か

(諫見さん)
  • 内部的にも外部的にもマーケティング会社。
  • サンプリングガール、学生チームたちの仲間を含めマーケティング部門の比率が高い。
  • ヨーロッパ式の洗練されたマーケティング会社。
  • 「クチコミ醸成のためのトータルコミュニケーション」を実行している。
  • クチコミ醸成も、トータルコミュニケーションもそれぞれ存在する。組み合わせて実践している応用的ケース。
  • ブランドマーケティング:ブランドポジショニング(文書であり、半永久的に変えない)を消費者の頭にインプットしていくのがマーケティング活動
  • ブランドポジショニングとして「こころ、からだ、みなぎる」
  • キーメッセージ:「レッドブル、翼を授ける」
  • ブランドキャラクター×ブランドイメージが明確に定義されている(詳細は語られず)…ヒントはMr.レッドブルこと、創業者のディートリッヒ・マテシッツ氏
  • ブランドをピラミッドと考えた場合、底辺は「ブランド認知」なら、頂点は「Recommendation」(推奨)となる。それはクチコミ行為そのもの。
  • クチコミを中心としたマーケティングをする理由…うまくいけば、バタフライエフェクトを起こせる。
  • バタフライエフェクトに関する説明として…感染の限界点(Tipping point)に到るまで、(1)少数者の法則(媒介者、情報通、説得者)、(2)粘りの要素、(3)背景の力、が存在
ココロ、カラダ、みなぎる。


レッドブルの隠された強さの秘密

(楠木先生)
  • 経営者はバタフライエフェクトを嫌がるし、時間もかかって効果が見えづらい
  • ブランドを作るストーリーが明確でないとできない
(諫見さん)
  • コトラーのマーケティング3.0になぞらえて【RB3.0】として語りましょう。
  • 協働マーケティングの実施…Top of the Top(アスリート、世界で100人くらい)、消費者、仲間達(サンプリングガール、学生たちを含む)
  • スポーツ&カルチャーマーケティング…スポーツ:エアレース、Xスポーツ。カルチャー:ミュージックアカデミー、ダンス、写真、アートF1・サッカー・アイスホッケーを除き、レッドブルのイベント
  • 心マーケティング…DM:Mr.レッドブル自身が体現。例)「Red Bull 翼を授ける」は1年半かかって発案、義理人情に厚い。
  • マーケティング活動:「レッドブル、翼を授ける」
(楠木先生)
  • 実はたいした秘密はないのかもしれない。秘密にするのが大事。秘密があるという状態自体がマーケティング。
  • レッドブルはアメリカっぽくない。上場しない。特定少数の取引先と契約するしない。弁護士が前にでてこない。
  • なにをやっているか以上に、なにをやっていないか。やることは徹底的にやる。
  • ヨーロッパ的に上品なひとのようなイメージ

(質疑応答)

  • Q:レッドブルはソーシャルメディアを活用したり、コンテンツ制作会社を持ってアプローチしているようだが…。
  • A:(諫見さん)テレビチャネルもあれば、雑誌もある。
  • A:(楠木先生)ソーシャルメディアが先ではなく、リアルのイベントなどのマーケティングありき。
  • 順番が逆。普通の会社は、ソーシャルメディアを使えば売上があがるかも、と考えるが、レッドブルは売上を上げてから、ソーシャルメディアを使って広げる。
  • Q:レッドブルのような事例やケースがあれば?個人的にはAKBと似ているように思う。
  • A:(楠木先生)戦略ストーリーの持ち味が似ているというならば、価格コム
  • 食べログは、ものすごくユーザー視点。ネガティブな情報が載っているのに、お店から収入が入る。自分たちの戦略ストーリーに自信を持ち、時間がかかるビジネス。
  • Q:ブランド戦略をみていると、ユーザーにレッドブルに依存するようにしかけているのでは。
  • A:(諫見さん)毎日なにかのマーケティング活動をたくさんのひとがしているので、消費者とのタッチポイントが多い。例えば、サンプリングガールは消費者と会話を繰り返し、その会話がクチコミになる場合も。
  • クチコミになりそうなアクティビティを続ける。ブランドは、よくてもわるくても会話に登場することが重要。
なお、トークショーの内容は、日経ビジネスオンラインでも掲載されるそうです。

楠木先生、諫見さん、三省堂書店有楽町店のみなさま、ありがとうございました。
(追記 2013年12月5日)
楠木先生のお名前を誤記していたので修正しました。大変、失礼しました。

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